ご挨拶

 私事で恐縮ですが、今年は8月に父が亡くなり、雑事に追いまくられて、ゆっくりする暇がありませんでした。夏休み中ということもあって、診療には余り支障をきたすことがなかったのが、不幸中の幸いでした。

 30年以上も甲状腺の病気を診ておりますが、まだまだ頭を悩ませることが多い疾患です。他院での誤った診断や治療もしばしば経験します。明らかに知識不足、経験不足と思われることも稀ではありません。専門医が居るはずの大病院で診てもらっている例でも、その様なことがあります。確かに甲状腺疾患は難しい病気で、教科書にも書いてないことが多く、経験が無いとどうすべきか迷うことが多いと思います。私も、かつては同じような過ちを犯したことがあるのではないかと、内心忸怩たる思いです。

 今も非常勤で外来を担当させていただいている甲状腺専門病院の伊藤病院には、私が大学在任中に指導した有能な先生方が、常勤ないし非常勤で4名も勤めております。私からみれば「まだまだ」ですが、将来楽しみな若い先生が、多くの患者さんに育ててもらっているのは嬉しい限りです。彼らや甲状腺専門医の先生方からも、時々患者さんのことで質問のメールが届きます。甲状腺疾患の科学的な研究は飛躍的に進歩しておりますが、こと治療になると旧来と何ら変わりがないのが現状です。ガイドラインを作って指標を示したとしても、最終的にどのような治療を選択するかを決めるのは、担当医と患者さんご本人です。当然のことながら、担当医の技量によって、その後の経過が変わってしまいます。エビデンスが重視される時代ですが、論文に出てこないような知識も必要だと思います。これからは、自分の経験を若い先生方に伝えていくことが、私の責務だと存じております。

平成21年9月吉日

飯高医院 院長
飯高 誠


戻る